「ごめんっ」
まずそれだけ。
「ごめん」
それだけしか言えない。
「ツバサ?」
キスしておきながら抱きつかれて動揺するコウに、ツバサは少し身を離して向かい合う。
「そんなコト考えてたなんて、思ってなかった。ごめんね」
すっごい誤解させちゃった。なのにコウ、こんなに優しい。
優しくて優しくて、ホント自分にはもったいない。
「ごめんね」
もう一度抱きつく。
「コウよりイイ男なんて、いるワケないじゃん」
「え?」
「何言っての?」
「何って…」
唖然と聞き返すコウの胸に強く頬を押し付ける。
暑いのに、コウの身体が暖かい。
「ごめん」
事の展開に戸惑うコウ。
えっと… これって?
しばらくの後に口を開く。
「ひょっとして俺、勘違いしてた?」
胸の中で大きく首を縦に振る。
「相変わらず、暴走し過ぎ」
悪いのは自分なのに。
しばしあって、頭上から苦しげな声。
「ごめん。俺てっきり」
「謝らないでっ」
なんでツバサが怒るのだろう?
「でも」
「悪いのは私なんだからっ!」
最後まで言わせず、強引に遮る。
「いや、俺がツバサを疑ったりして」
「ごめんなさいっ」
コウは悪くない。疑われたなんて、思ってない。
私の行動が悪かったのだ。コウが誤解するのも当然だ。
「ツバ…」
「ごめんっ」
「あの」
「ごめんっ! でも信じて。私、コウが好きだから」
がむしゃらに繰り返すツバサ。呆れたような小さなため息。
やがてコウは、そっと背中に両手をまわした。
「大丈夫。俺、お前を信じてる」
あぁ――…
優しさが、ツバサを包む。決して手放したくはない暖かさ。
お兄ちゃん。私やっぱり、バカだよね。
「ごめん」
ごめんね、シロちゃん。
写真を捻じ込んだポケットが重い。
私、コウを取られたくないの。
コンッと、人差し指で机を叩く。その音に反応する者はいない。
開閉しないガラス窓からは夕日。直接浴びると、ジリジリと痛い。
「おかしくねぇか?」
聡の言葉に、今度は瑠駆真も反応する。
「もうすぐ六時だよな?」
「あぁ」
腕時計へチラリと視線を投げ、言葉だけで肯定する。
「六時だね」
その視線をぼんやりと床へ投げ、やがて聡へ向ける。
夕暮れの駅舎。座るのは二人。
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